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マッターホルン

マッターホルン(スイス・ツェルマット) / Andrew Bossi(CC BY-⁠SA 2.5)

モデルプラン公開 更新日

スイス・アルプス5泊7日モデルプラン⁠|マッターホルンとユングフラウの絶景をめぐる旅

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目次11項目
  1. 旅程表
  2. DAY 1 初日に山の券を買わないのが、この行程のいちばん大事な決めごと
  3. DAY 2 3,454mの駅まで45分。ただし定価は249.20フランで、公式が出す129.60フランとは別物
  4. DAY 3 前日に3,454mまで行ったなら、翌日は2,166mに落とす
  5. DAY 4 ツェルマットに入れないのはガソリン車だけではない
  6. DAY 5 展望台は5方向ある。2つ上がると2人で500フランを超える
  7. DAY 6-7 帰り道にルツェルンを挟めるのは、空港が街の側にあるから
  8. 定番の氷河特急を全線では乗らない理由
  9. 旅程の変更案
  10. 宿泊エリアの選び方
  11. この旅行でかかる費用
2人分の鉄道・登山鉄道・宿泊税(航空券・宿・食事を除く)1,564.80スイスフラン内訳は末尾の表

スイス・アルプス5泊7日を、グリンデルワルトに3泊、ツェルマットに2泊で割ります。移動と山の実費は定価で2人1,564.80フラン、1フラン191円なら約299,200円。高いのは入場料ではなく高さと距離を買う運賃で、150フランのハーフフェアカードを1枚買うと1人226フラン戻ります。

旅程表

午前午後夜
DAY 1機内チューリッヒ着 → グリンデルワルトへ村で夕食・翌日の天気を見る
DAY 2ユングフラウヨッホへ登るスフィンクス展望デッキ・氷の宮殿グリンデルワルトへ戻る
DAY 3フィルストとバッハアルプ湖村さんぽチーズフォンデュ
DAY 4ツェルマットへ移動車の入らない村を歩くマッターホルンの日没
DAY 5ゴルナーグラート2つ目の展望台か村で休むツェルマット泊
DAY 6-7ツェルマットを発つルツェルン → 空港機内泊 → 翌日着

DAY 1初日に山の券を買わないのが、この行程のいちばん大事な決めごと

動線の意図: 初日は移動だけに使う。山のきっぷは買わず、翌朝の天気を見てからDAY 2とDAY 3の中身を決める。

スイスはEUに入っていませんが、シェンゲン協定には加盟しています。日本国籍で観光に行くならビザは要りません。滞在できるのはあらゆる180日の期間内で最大90日までで、ほかのシェンゲン諸国での滞在日数も通算されます。旅券は出国予定日から残存3か月以上、しかも発行から10年以内であることが条件です。10年券の最後の年に旅行を入れると、この2つ目の条件で引っかかります。

入国の手続きは、この1年で形が変わりました。EESという出入国システムが2026年4月10日に完全運用へ入り、旅券にスタンプは押されなくなっています。代わりに登録されるのが指紋4本と顔画像。初回の入国時に対面で登録し、2回目以降は照合だけです。スイス国内では段階導入が先行していて、バーゼルとジュネーブの空港が2025年10月12日、チューリッヒ空港が11月17日から動いていました。

もう1つのETIASという電子渡航認証は、2026年9月の時点でまだ動いていません。開始日も公表されていない。欧州連合は運用開始の数か月前に日付を知らせると告知しているので、いま予約する旅なら「渡航前にもう一度見る」だけで足ります。手数料は20ユーロ、有効期間は3年かパスポートの失効日の早いほうまで。18歳未満と70歳超は手数料が免除されますが、申請そのものは要ります。

通貨はユーロではなくスイスフランです。ユーロで払える店も多いものの、おつりはフランで返ってきます。

電源は230V・50Hz。プラグはCタイプ(丸2ピン)とJタイプ(丸3ピン)で、Cタイプの2ピンはJタイプのソケットにも挿さります。ただしCタイプはアースが取れず、スイスで認められているユーロプラグは最大2.5Aまで。ドライヤーのような高出力の機器を持っていくなら、Jタイプの3ピンに変換するほうが確実です。スイス政府観光局が案内しているのは、近年のホテルはコンセントが壁に埋め込まれていることが多いので薄型のプラグを選ぶこと。分厚い旅行用アダプターだと壁に当たって奥まで入りません。変圧器まで要るかどうかは変換プラグと変圧器の違いで分けています。

空港から宿までは、チューリッヒ空港からインターラーケン・オストまで2時間09分から2時間19分、乗り換え1〜2回で77.00フラン。そこからグリンデルワルトまでは直通で36分、11.80フランです。毎時4分と34分の発車なので、空港の入国審査が長引いても30分後の便に乗れます。

宿をグリンデルワルトに置くのは、ユングフラウヨッホまで45分で着くからです。インターラーケン・オストに泊まると、そこからさらに36分をかけてグリンデルワルトまで戻ることになります。

チェックアウトのときに、予約サイトの表示に入っていない請求が出ます。クアタックスと呼ばれる宿泊税です。国の制度ではなく市町村税で、州法が各市町村に課税権を与え、税率は村ごとの条例が決めます。グリンデルワルトの条例額は大人1泊4.20フラン、山小屋なら3.20フラン、12歳未満は免除。観光局の表示では分担金込みで4.70フランになっています。

DAY 23,454mの駅まで45分。ただし定価は249.20フランで、公式が出す129.60フランとは別物

動線の意図: 晴れの予報が出た日をこの日に当てる。山の上では移動を減らし、酸素の薄さに体を慣らす時間を先に取る。

ユングフラウヨッホの岩峰に立つスフィンクス展望台とスイス国旗
ユングフラウヨッホのスフィンクス展望デッキ。標高3,571m。 写真: Roy Egloff(CC BY-SA 4.0)
ユングフラウヨッホ(トップ・オブ・ヨーロッパ)08:15 の便から4時間30分

見どころ: 駅そのものが標高3,454mにあり、岩をくり抜いたトンネルの中に作られています。展望デッキのあるスフィンクス観測所はさらに上の3,571m。そこから見下ろすアレッチ氷河は全長22km、厚さ900m、氷の量が120億トンという規模で、「スイス・アルプス ユングフラウ=アレッチ」としてユネスコの世界自然遺産に登録されています。途中のアイスメーア駅(3,160m)では、トンネルの窓から氷河を横から覗けます。

実用tip: グリンデルワルト・ターミナルからアイガー・エクスプレスで15分、乗り継いだユングフラウ鉄道で26分、合わせて45分。旧ルートより47分短くなりました。ユングフラウ鉄道の上り初便はアイガーグレッチャー発08:15、上り最終が17:15、下り最終が17:47です。標高3,400m台は平地の3分の2ほどの気圧なので、着いてすぐ階段を駆け上がると息が続きません。最初の20分は屋内で過ごすくらいがちょうどいい。

往復運賃(定価)
グリンデルワルト・ターミナル発 249.20 フラン / インターラーケン・オスト発 271.20 フラン
座席指定料
1名 10 フラン(2026年5月1日〜10月31日は必須)
標高
駅 3,454 m / スフィンクス展望デッキ 3,571 m
所要
グリンデルワルト・ターミナルから 45 分

ここに、この旅でいちばん引っかかりやすい落とし穴があります。公式サイトに出ている「129.60フランから」という表示は、グリンデルワルト・ターミナル発かつハーフフェアカードを持っている人の往復額です。割引なしの定価は同じ区間で249.20フラン、インターラーケン・オスト発なら271.20フラン。2倍近く違います。

持っているものグリンデルワルト・ターミナル発インターラーケン・オスト発備考
何も無し(定価)249.20 フラン271.20 フラン夏季・2等・往復
ハーフフェアカード129.60 フラン140.60 フランカード代 150フランが別途
スイストラベルパス189.60 フラン189.60 フランこの区間は乗り放題に含まれない
ユングフラウ・トラベルパス89.00 フランから89.00 フランから接続券(座席指定料込み)・50%引き

冬は運賃そのものが下がります。インターラーケン・オスト発の定価が224.40フラン、ハーフフェアカードなら112.20フラン。同じ区間で47フラン近く違うので、雪の季節を選べる日程なら、ここは冬のほうが安い。

ユングフラウ・トラベルパスは、地方の鉄道・バス・ロープウェイ・遊覧船が乗り放題になるパスです。3日で210フラン、8日で330フラン。ただしユングフラウヨッホは含まれません。別に接続券が要り、夏季は89フランから、冬季は63フランから。16歳未満のパス保有者だけは接続券が無料になります。

この行程でユングフラウ地方の山に上がるのは、ユングフラウヨッホとフィルストの2回だけです。定価で積むと1人290.20フラン、3日のパスに接続券を足すと299.00フランで、ほとんど差が出ません。パスの利点は乗り放題の3日間そのもので、シーニゲ・プラッテやハーダークルムまで足して1日2か所ずつ上がる旅なら効いてきます。2か所で終わるなら、どちらを選んでも300フラン前後に着地します。

午後は山の上で使い切ります。氷の宮殿は氷河の内部をくり抜いた通路で、床も壁も氷。靴底が滑るので、山を歩く予定がなくてもグリップのある靴で来たほうがいい。

DAY 3前日に3,454mまで行ったなら、翌日は2,166mに落とす

動線の意図: 高度を1,300m下げて、歩く日にする。午前に稜線、午後は村、夜は屋内。

午前: バッハアルプ湖までは往復2時間、そこが引き返す目安になる

グリンデルワルト・フィルスト08:00 の便から4時間

見どころ: 標高2,166mの台地で、グリンデルワルトから6人乗りゴンドラで約25分。降りた先に崖へ張り出した吊り橋があり、公式名は「First Cliff Walk by Tissot」。全長45mを渡って戻るのに20分ほどかかります。足元が抜けた区間があって、高所が苦手だと手すりから離れられません。そこから稜線をたどると、標高2,265mのバッハアルプ湖に出ます。

実用tip: 往復運賃は定価41.00フラン、ハーフフェアカードで20.50フラン、スイストラベルパスなら38.00フラン。上りの運行は08:00から17:30、下りは18:00までです。湖までは片道1時間弱、往復で約2時間。標高2,200m前後を歩くので、平地の同じ距離より息が上がります。マウンテンカートとトロッティバイクは大人それぞれ25フランで、これはゴンドラ運賃とは別勘定。マウンテンカートはオンライン販売がなく、窓口か現地でしか買えません。

往復運賃
定価 41.00 フラン / ハーフフェアカード 20.50 フラン / スイストラベルパス 38.00 フラン
標高
フィルスト 2,166 m / バッハアルプ湖 2,265 m
所要
ゴンドラ約 25 分 / 湖まで往復約 2 時間
アクティビティ
マウンテンカート・トロッティバイク 各 大人 25 フラン(所要 約30分)

往復2時間という数字は、引き返す判断の基準にもなります。10時に歩き始めて正午に戻れない場合、どこかで雲か風に足を止められていると考えたほうがいい。湖の水面に山を映す構図は無風の朝にしか出ないので、風が吹いていたら目的を切り替えて稜線の眺めだけで満足するほうが、山では正解です。

午後から夜: 村の通りは日が落ちてからのほうがいい

薄暮のグリンデルワルト村のメインストリートと背後の岩壁
グリンデルワルトのメインストリート(2006年撮影)。背後の岩壁に懸垂氷河が残る。 写真: Michael Ng(CC BY-SA 3.0)
グリンデルワルトの村15:00 から自由

見どころ: 一本の通りに宿と店が並び、その背後にいきなり岩壁が立ち上がります。街並みそのものより、通りのどこからでも壁が見えるという地形が土地の性格を決めています。牛が首につけた鈴の音は、斜面の放牧地から風に乗って降りてきます。

実用tip: 宿でもらえるゲストカードは、路線バスとスキーバスが無料になります。グリンデルワルト−メンリッヘンのゴンドラが30%引き、フィルスト鉄道が15%引き、氷河渓谷が21フランから18フランへ。宿泊税を払うと自動的に付いてくるものなので、チェックインのときに受け取ったか確認してください。

宿泊税
大人 1泊 4.20 フラン(条例額) / 山小屋 3.20 フラン / 12歳未満 免除
ゲストカード
路線バス無料・ゴンドラ30%引き・フィルスト鉄道15%引き
最寄り
グリンデルワルト駅 / グリンデルワルト・ターミナル
カケロン鍋のチーズフォンデュと角切りパン、じゃがいも
チーズフォンデュ。パンのほかにじゃがいもとピクルスが添えられる。 写真: Juliano Mendes(CC BY 2.0)

夜はチーズフォンデュかラクレット。どちらも溶かしたチーズを主役にした料理で、レシュティ(じゃがいものお焼き)が付け合わせに出てきます。

会計でチップに悩む必要はありません。スイスの価格表示令は、サービス料のように客が選べない追加料金を表示価格に含めることを義務づけています。業界団体のガストロスイスも、飲食業のチップは1974年以降すでに価格に入っていると明言している。上乗せは完全に任意です。慣習として10%ほど足すか端数を切り上げる人がいる、という程度。付加価値税は標準が8.1%で、店内で食べると標準税率、同じものをテイクアウトすると軽減税率の2.6%になります。

DAY 4ツェルマットに入れないのはガソリン車だけではない

動線の意図: 午前を移動に充て、午後を村に置く。荷物を持って歩く区間を、日が高いうちに済ませる。

インターラーケン・オストからツェルマットまでは2時間20分前後、乗り換え2回で86.00フラン。シュピーツからレッチュベルクのトンネルを抜けてフィスプへ出る経路です。

「ツェルマットは電気自動車の村」という紹介をよく見かけますが、村の交通条例はもう少し厳しいことを言っています。原則として自治体の許可なく自動車も馬車も通行できないのが条文の建て付けで、禁じられているのは燃料の種類ではなく「許可のない自動車交通」そのもの。観光局のFAQも、電気自動車には通常の自動車と同じ規則が適用され、車でツェルマットへ行くことはできないと書いています。逆に、特殊輸送用の内燃機関車は許可されている。条例は内燃機関に切り替えられるハイブリッド車も名指しで禁じ、通行が許された車両の最高速度を20km/hに制限しています。

自家用車で来る人は手前のテッシュまでです。テッシュからツェルマットまでのシャトル列車は12分・20分間隔で、05:55から21:55までがその間隔。週末は深夜も走ります。往復17.20フランで、購入日から30日間、各方向1回ずつ使えます。テッシュ側のマッターホルン・ターミナルには屋根付きの駐車場が2,100台分あり、うち131台に充電器が付いています。

村の中を走っているのは、電気タクシーと馬車、無料のeバス2路線、それに自転車です。自治体は自分たちの村を「自動車はないが交通がないわけではない」と説明しています。舗装路が22kmあり、そこを時速20km以下の電気自動車が行き交う。荷物が重いなら、宿まで電気タクシーを頼むのがいちばん早い。

薄暮に灯がともるツェルマットの村と正面奥のマッターホルン
ツェルマットの村。正面奥に立つのがマッターホルン(4,478m)。 写真: Chensiyuan(CC BY-SA 4.0)
ツェルマットの村とマッターホルン14:00 から日没まで

見どころ: 標高4,478mのマッターホルンは、村のほぼどこからでも正面に見えます。村の中心は標高1,620m、鉄道駅が1,605m。自治体の最高点はモンテ・ローザのドゥフール峰で4,634mあり、村域の75%が自然保護区です。スイスに54座ある4,000m峰のうち38座がこの村の周りに集まっています。

実用tip: 朝日で山肌が赤く染まる現象はドイツ語でモルゲンロートと呼ばれます。Morgen は朝という意味なので、夕方の赤はモルゲンロートではなくアーベントロート。ちなみに観光局と鉄道の公式ページはどちらの語も使っておらず、「最初の陽光」という言い方をしています。朝を狙うなら、日の出の30分前には外に出ることになります。

標高
マッターホルン 4,478 m / 村の中心 1,620 m
村へのアクセス
テッシュからシャトル列車 12 分・20 分間隔・往復 17.20 フラン
村内の移動
電気タクシー・馬車・無料eバス2路線・自転車・徒歩(最高速度 20km/h)
宿泊税
1泊 4.00 フラン(9〜16歳は半額・9歳未満は免除)

DAY 5展望台は5方向ある。2つ上がると2人で500フランを超える

動線の意図: 午前をゴルナーグラートに固定する。午後は体力と予算を見て、2つ目に上がるか村で休むかを決める。

ゴルナーグラート08:00 の便から3時間30分

見どころ: 標高3,089mの尾根で、1898年に開業したスイス初の電気式ラック鉄道が上がります。頂上に着くとマッターホルンが正面、その右手にゴルナー氷河が流れ下る。周囲には4,000m級の峰がいくつも並び、氷河と岩と雪だけの視界が水平に続きます。尾根伝いに下るハイキング道も整備されていて、リッフェルベルク(2,582m)やローテンボーデン(2,825m)の駅から乗り直せます。

実用tip: 往復運賃は夏(2026年5〜10月)が定価132.00フラン、冬が102.00フラン。ハーフフェアカード・GA・スイストラベルパスはいずれも50%引きで、夏の往復なら66.00フランになります。ツェルマット駅から約50mの位置に乗り場があり、片道33分。始発07:00、以降は08:00から24分間隔です。通年運行で、2026年に止まるのは11月2日から14日の工事期間だけ。

往復運賃(定価)
夏 132.00 フラン / 冬 102.00 フラン(割引カードで50%引き)
標高
ゴルナーグラート 3,089 m / ツェルマット駅 1,605 m
所要
片道 33 分(08:00から24分間隔・始発07:00)
運休
2026年は11月2日〜14日のみ(工事)

午後にもう1つ上がるかどうかは、財布との相談になります。ツェルマットから上がれる展望台は5方向あり、運賃の幅が大きい。

展望台標高往復・定価(2026年7〜8月)向く人
ゴルナーグラート3,089 m132.00 フラン(夏)マッターホルンを正面から見たい
マッターホルン・グレッシャー・パラダイス3,883 m132.00 フラン(5〜6月・9〜10月は120.00)ヨーロッパ最高所の山岳駅に立ちたい
スネガ2,288 m33.00 フラン短時間で高さを取りたい
ロートホルン3,202 m89.00 フラン湖と峰の組み合わせを撮りたい
Peak2Peak—212.00 フラン2方向を1日でつなぎたい

ゴルナーグラートとマッターホルン・グレッシャー・パラダイスを同じ日に入れると、定価なら2人で528フラン。この旅の登山鉄道の総額の6割が1日で乗ります。どちらか1つに絞るなら、マッターホルンを正面から見たいならゴルナーグラート、高さそのものを体験したいなら3,883mのグレッシャー・パラダイスです。後者はヨーロッパで最も高い場所にある山岳駅として公式に案内されていて、往復券には地下15mにある世界最高所の氷の宮殿の入場も含まれます。展望台からは38の4,000m峰と14の氷河、3か国が見える。

午後を村で休む選択も、この行程では負けではありません。翌日は移動で1日が消えるので、ここで体力を戻しておくと帰りが楽になります。

DAY 6-7帰り道にルツェルンを挟めるのは、空港が街の側にあるから

動線の意図: 空港に入る時刻から逆算する。荷物を預けられる駅で半日を作り、山の余韻を平地でほどく。

ツェルマットからルツェルンまでは3時間24分、乗り換え2回で122.00フラン。フィスプからレッチュベルクを抜け、ベルンを経由して北へ出ます。ルツェルンからチューリッヒ空港までは直通で1時間12分、乗り換えを1回はさむ便なら1時間02分、31.00フランです。

ルツェルンが帰り道に挟めるのは、この位置関係のおかげです。山から空港への一本道の途中にあり、寄っても遠回りにならない。南のサンモリッツとは正反対で、その話は次の節に書きます。

レウス川に架かるカペル橋と水の塔、対岸の旧市街
カペル橋と水の塔。橋が架かるのはルツェルン湖ではなくレウス川。 写真: Sputniktilt(CC BY-SA 3.0)
ルツェルン旧市街とカペル橋午後から3時間

見どころ: カペル橋は14世紀半ばに架けられた全長204mの屋根付き木造橋で、観光局はヨーロッパ最古の木造橋のひとつと紹介しています。切妻にはルツェルンとスイスの歴史を描いた板絵が並ぶ。橋に寄り添う八角形の水の塔は橋より古く、1290年から1300年ごろの建造で高さ34.5mあります。

実用tip: 1993年8月18日の夜に火災があり、元の板絵158枚のうち110枚が被災しました。再建は8か月で、翌1994年4月14日に渡り直せるようになっています。いま並んでいる板絵は、焼けなかったものと描き直したものが混ざっている。湖のほとりの街と紹介されますが、この橋が架かるのはレウス川のほうで、湖の正式名はドイツ語でフィーアヴァルトシュテッテ湖といいます。

カペル橋
14世紀半ば建造・全長 204 m・水の塔は高さ 34.5 m
火災と再建
1993年8月18日に板絵110枚が被災 → 8 か月で再建・1994年4月14日再開通
宿泊税
1泊 2.30〜2.80 フラン(宿の等級による・12歳未満は免除)
拝観料
橋を渡るのは 0 円

もう1つの目的地になる瀕死のライオン像は、1792年8月10日のチュイルリー宮襲撃で戦死したスイス傭兵の慰霊碑です。1821年の除幕、原型を作ったのはデンマークの彫刻家トーヴァルセン。岩壁を10m×6mにくり抜いて彫ってあります。マーク・トウェインが「世界でいちばん悲しく心を打つ石」と書いた像で、槍を折られたライオンが盾に頭を預けて息絶えようとしている。

ルツェルンに泊まる日程なら、宿泊税を払うとビジターカードが付きます。市内交通ゾーン10のバスと鉄道が無料になり、ロープウェイと博物館が割引になる。滞在の初日から最終日まで、最大14日間有効です。

時計とチョコレートの買い物はここで済ませます。山の村にも店はありますが、品ぞろえも価格も街のほうが広い。食事も山とは別の系統で、仔牛肉をクリームで煮たチューリッヒ風のゲシュネッツェルテスは都市側の料理です。チーズを溶かす山の料理が続いたあとだと、これが軽く感じられます。

定番の氷河特急を全線では乗らない理由

ランドヴァッサー橋を渡ってトンネルへ入る氷河特急
ランドヴァッサー橋(2007年撮影)。全線に乗ると通る東側の区間で、この5泊7日では通らない。 写真: Daniel Schwen(CC BY-SA 2.5)

氷河特急はツェルマットとサンモリッツを結ぶ列車です。291kmを走り、91のトンネルと291の橋を渡る。公式が出しているファクトは所要「8時間」、平均時速42km/h。実際のダイヤは方向で違っていて、西行が7時間45分、東行が8時間29分です。2026年夏のダイヤだと、ツェルマット8時52分発の902列車がサンモリッツに16時37分着。

スイス政府観光局はこの列車を「世界でいちばん遅い特急」と紹介しています。氷河特急の運営会社自身はその言い方をしていなくて、自分たちのサイトでは「世界で最もよく知られた狭軌鉄道のひとつ」と名乗っている。

つまり車窓の8時間と引き換えに、移動の1日を余分に払うことになります。

降りた先のサンモリッツはスイスの南東の端で、チューリッヒ空港からいちばん遠い側です。5泊7日にこれを入れると、帰りにもう一度反対方向へ横断する日が要る。ルツェルンを挟める北回りとは、そこが決定的に違います。

金額も小さくありません。全線の乗車券が2等159.00フラン、1等272.00フラン。そのうえ座席指定が全乗客に義務で、1等も2等も54.00フランかかります。2人で2等なら426.00フラン。スイストラベルパスやユーレイルを持っていても、座席指定料だけは全額の負担です。

予約の受付にも決まりがあります。個人客の座席指定は乗車日の93日前から、乗車券は180日前から。「3か月前までに押さえるべき」という話をよく聞きますが、公式が言っているのは「需要が高いので早めに予約を」だけで、93日前というのは受付が開く日のことです。運行期間も通年ではなく、2026年の夏ダイヤは5月2日から10月10日まで。10月11日から12月4日は運休し、次の冬ダイヤは12月5日に始まります。紅葉を狙って10月下旬に行くと、この空白にまるまる当たります。

全線に乗りたいなら、この行程を伸ばすほうが素直です。ツェルマットからサンモリッツへ1日かけて移動し、サンモリッツに1泊して、翌日にチューリッヒへ戻る。6泊8日になりますが、車窓を途中で切らずに済みます。5泊7日のままなら、西側の区間だけに乗って北へ抜けるか、同じ谷を走る通常の特急で車窓を取るほうが日程に収まります。

旅程の変更案

雨の日の組み替え

山では雨より雲のほうが効きます。標高3,454mのユングフラウヨッホは、雲の層の中に入ってしまうと窓の外が真っ白になる。定価249.20フランを払って何も見えない日というのが、この旅でいちばん痛い失敗です。

だから初日に券を買いません。DAY 2とDAY 3はどちらもグリンデルワルトを起点にした日帰りなので、前夜の予報で入れ替えられます。晴れをユングフラウヨッホに当て、曇りをフィルストに回す。フィルストは2,166mなので、雲底が低い日でも下に出られることがあります。

2日とも崩れる予報なら、ルツェルンを前倒しして山を1日ずらす手もあります。ただしグリンデルワルトからルツェルンまでは片道で2時間半前後かかり、往復すると半日以上が消える。その半日を天気の賭けに使う価値があるかは、残りの日数次第です。

便が1時間以上遅れたら

DAY 1に山のきっぷを入れていないので、往路が遅れて失うのは移動時間だけです。インターラーケン・オストからグリンデルワルトへの列車は毎時2本あり、最終が22時05分。夜に着いても翌朝のDAY 2はそのまま成立します。

効くのは復路側です。ツェルマットからチューリッヒ空港までは乗り継いで4時間半ほどかかり、そこにルツェルンでの3時間を挟んでいます。列車が1本遅れたときに削れるのは、ルツェルンの滞在時間だけ。空港に入る時刻から逆算して、ルツェルンで何時の列車に乗るかを先に決めておくと、遅れたときに切る場所が明確になります。

氷河特急を全線で入れた日程なら、話はもっと厳しくなります。座席指定が義務の列車は、1本落とすと当日の振り替えができません。

疲れた時の妥協案

最初に落とすのはDAY 5午後の2つ目の展望台です。定価なら2人で240フランから264フラン浮きます。午前のゴルナーグラートで山の眺めはもう取れているので、失うのは高さの体験だけ。

次がDAY 3のバッハアルプ湖です。往復2時間の歩きで、標高2,200m前後を上下します。フィルストの吊り橋まででも台地からの眺めは成立するので、ゴンドラの41.00フランは無駄になりません。

削ってはいけないのはDAY 2です。ユングフラウヨッホはこの旅の高さの上限で、ほかの日に代わりが立たない。

この行程が向かないのは、標高3,000mを超えると頭が痛くなる人です。DAY 2で3,571m、DAY 5で3,089m、2つ目の展望台まで足すと3,883m。外務省もスイスについて、登山電車やケーブルカーで簡単に2,000mを超えられるぶん急な気圧の低下で体調を崩す例があると注意していて、短いハイキングのあとに脳梗塞で緊急入院する事例も挙げています。さらに重いのが費用の話で、山岳事故の救助費用と緊急搬送費は自己負担。一千万円を超える例もあると書かれています。海外旅行保険の山岳特約か、スイス航空救助隊レガへの加入を確かめてから入るほうが安い。低い側で組み直すなら、ユングフラウヨッホをクライネ・シャイデック(2,061m)止まりにして、ツェルマット側もスネガ(2,288m)で抑える形になります。

宿泊エリアの選び方

宿に求めるのは登山鉄道の起点に泊まることだけです。山の上の滞在時間は、宿から起点までの距離でそのまま削られます。

グリンデルワルトは、ユングフラウヨッホまで45分の起点です。フィルストのゴンドラも村から乗れるので、DAY 2とDAY 3の両方が宿の徒歩圏から始まります。インターラーケン・オストに泊まると、毎朝36分の列車が1本ずつ増える。宿泊税は条例額で大人1泊4.20フランです。

インターラーケンは街としては大きく、宿の選択肢も食事の選択肢も多い。ゲストカードの範囲が広く、周辺11自治体の公共交通が無料になります。州の宿泊税が1泊1.00フラン、町のクアタックスが夏2.50フラン。ただし町の条例が2006年施行と古く、実際の請求額とずれている可能性があります。

ヴェンゲン(1,274m)とミューレン(1,638m)は、ツェルマットと同じく車が入れない村です。ヴェンゲンへはラウターブルンネンから世界最長のラック式鉄道で上がり、往復14.40フラン。ミューレンへはラウターブルンネンからケーブルカーと登山電車を乗り継ぐか、シュテッヘルベルクからロープウェイで上がります。後者の新しいロープウェイは勾配159.4%で、世界でいちばん急です。静けさは群を抜いていますが、荷物の積み替えが1回増える。スーツケースで行く旅には向きません。

ツェルマットは村全体が車禁止なので、駅から宿までの手段を先に決めておきます。電気タクシーを呼ぶか、宿の送迎を頼むか、自分で引くか。舗装路22kmの村に坂があるので、駅から遠い宿ほど荷物が効いてきます。宿泊税は1泊4.00フランです。

グリンデルワルトユングフラウヨッホとフィルストの両方を宿の徒歩圏から始めたい。宿泊税 1泊 4.20 フラン
インターラーケン宿と食事の選択肢を広く取りたい。周辺の公共交通を無料で使いたい。山の起点まで 36 分
ツェルマットマッターホルンを朝夕に見たい。ゴルナーグラート鉄道の始発に乗りたい。宿泊税 1泊 4.00 フラン

予約の順番は、航空券、宿、山のきっぷです。山だけは最後に回します。天気で日を入れ替える余地を残しておくのがこの行程の設計なので、先に日付を固定すると入れ替えられなくなる。例外が氷河特急で、座席指定の受付が93日前に開く仕組み上、全線に乗る日程なら航空券と同じ時期に押さえることになります。通信の手当てはeSIMとレンタルWiFiの分岐点で人数別に分けています。

この旅行でかかる費用

前提: 大人2人、グリンデルワルトに3泊してツェルマットに2泊、山に上がるのはユングフラウヨッホ・フィルスト・ゴルナーグラートの3か所。鉄道は2等で、割引カードを持たない定価で積んでいます。ゴルナーグラートは2026年夏の料金。航空券と宿と食事は総額から外しました。

支払い単位支払先2人分備考
チューリッヒ空港 → インターラーケン・オスト ×2人スイス連邦鉄道154.00 フラン1人 77.00フラン・2時間09〜19分
インターラーケン・オスト ⇄ グリンデルワルト ×2人スイス連邦鉄道47.20 フラン片道 11.80フラン・直通36分
インターラーケン・オスト → ツェルマット ×2人スイス連邦鉄道172.00 フラン1人 86.00フラン・2時間20分前後
ツェルマット → ルツェルン ×2人スイス連邦鉄道244.00 フラン1人 122.00フラン・3時間24分
ルツェルン → チューリッヒ空港 ×2人スイス連邦鉄道62.00 フラン1人 31.00フラン・1時間02分
ユングフラウヨッホ往復(座席指定込) ×2人ユングフラウ鉄道498.40 フラン1人 249.20フラン・グリンデルワルト・ターミナル発
フィルスト往復 ×2人ユングフラウ鉄道82.00 フラン1人 41.00フラン
ゴルナーグラート往復(夏) ×2人ゴルナーグラート鉄道264.00 フラン1人 132.00フラン・冬は102.00フラン
宿泊税 3泊 ×2人グリンデルワルトの宿25.20 フラン大人1泊 4.20フラン(条例額)
宿泊税 2泊 ×2人ツェルマットの宿16.00 フラン1泊 4.00フラン
合計(航空券・宿・食事を除く)1,564.80 フラン1フラン191.23円なら約299,200円

上表の料金はすべて 確認日 2026-09-20 時点の公式表示。為替は欧州中央銀行の参照相場(2026-09-18)から算出した1フラン191.23円。

1,564.80フランの内訳は、都市間の鉄道が679.20フラン、登山鉄道が844.40フラン、宿泊税が41.20フラン。ヨーロッパの都市を回る旅では入場料が総額を決めますが、スイスでは高さと距離を買う運賃がそれに当たります。ユングフラウヨッホの往復1人249.20フランは、それだけで4万8千円近い。

ここで効くのが割引カードです。ハーフフェアカードは150フランで1か月、期間中のきっぷが半額になります。この行程に当てはめると、都市間の鉄道が339.60フランから169.80フラン、ユングフラウヨッホが249.20フランから129.60フラン、フィルストが20.50フラン、ゴルナーグラートが66.00フラン。カード代を足しても1人535.90フランで、定価の761.80フランより225.90フラン安い。2人なら451.80フラン、日本円で8万6千円ほどの差です。

買い方(1人あたり)カード・パス代きっぷ代の合計総額
何も買わない(定価)0761.80 フラン761.80 フラン
ハーフフェアカード150.00 フラン385.90 フラン535.90 フラン
スイストラベルパス 8日・2等439.00 フラン293.60 フラン732.60 フラン

スイストラベルパスは都市間の鉄道を乗り放題にしますが、8日券が439フランと高く、しかもユングフラウヨッホは乗り放題に含まれません。この行程ではハーフフェアカードより1人196.70フラン高くつきます。円にして3万7千円ほど。パスが効くのは、移動の回数がもっと多い旅か、500を超える美術館の無料入場を使い倒す旅のほうです。リギ・シュタンザーホルン・シュトースの3山は運賃が丸ごと含まれるので、そちらを組み込む日程なら評価が変わります。

削る方向は2か所です。フィルストを落とすと2人で82.00フラン、ゴルナーグラートを落とすと264.00フラン。ゴルナーグラートを外すとツェルマットに泊まる理由の半分が消えるので、削るならフィルストのほうが痛みが小さい。増やす方向なら、マッターホルン・グレッシャー・パラダイスが2人で264.00フラン(7〜8月)、氷河特急の全線が2人で426.00フランです。

為替には幅を見ておいたほうがいい。欧州中央銀行の参照相場から引くと1フラン191.23円ですが、直近90日のレンジは188.83円から201.40円で、12円以上も動いています。2026年8月の平均は196.65円、9月の平均は191.28円。円換算は下を190円、上を202円で両端を見ておくと予算が外れにくい。日本銀行はフラン円の系列を出していないので、日次の一次値はこの経路でしか取れません。

この行程が向かないのは、日程を先に固めて動かせない人です。山の見え方は当日の雲で決まり、きっぷは前夜まで買わないという組み方が前提になっています。全部を早く押さえて安心したい旅とは、そもそも相性が合いません。

運休の予定は直前に動きます。2026年は11月2日から14日にゴルナーグラート鉄道が工事で止まり、ヴェンゲンとメンリッヘンを結ぶロープウェイも9月の時点で点検運休中でした。同じ山と城を組み合わせる旅ならミュンヘンとノイシュバンシュタイン城の4泊6日、同じ5泊7日で海に振るならサントリーニとアテネの5泊7日、鉄道で音楽の都まで足すならウィーンの3泊5日が近い規模です。

出典: ユングフラウ鉄道 / グリンデルワルト観光局・同町条例 / ツェルマット観光局・同町条例(交通・宿泊税) / マッターホルン・グレッシャー・パラダイス / ゴルナーグラート鉄道 / マッターホルン・ゴッタルド鉄道 / グレッシャー・エクスプレス(Sales Manual 2026) / スイス政府観光局 / スイス連邦鉄道(SBB) / ルツェルン観光局・ルツェルン市条例 / 連邦強電流設備監督局(ESTI) / 連邦税務局(VAT) / ガストロスイス / 外務省 安全対策基礎データ / 欧州委員会(EES・ETIAS) / 欧州中央銀行・スイス国立銀行(為替) の各公式サイト / 確認日 2026-09-20 / アイキャッチ写真: Andrew Bossi/CC BY-SA 2.5(Wikimedia Commons)

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