2時間かけて淹れるタイの路上コーヒーから学ぶROIと採算性
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目次6項目
国際コーヒー機関の指標価格は、2026年9月11日のロブスタが173.02米セント/ポンド。税関の公示レート(1米ドル158.81円・1バーツ4.80円)で割り戻すと生豆は1kgあたり約606円で、20gなら12円、2.5バーツ。いっぽうバンコクの最低賃金は日額400バーツ、8時間で割れば1時間50バーツです。原価表の中でいちばん重いのは豆ではなく、注ぐ人の時間のほうになります。
まず確認: 頼む前に、何が入るかが呼び名で決まっている
- 甘いコーヒーが前提の国だと知ったうえで注文する
- 冷たいものを頼むと氷が入る。水まわりの注意を読んである
- 屋台は現金。20バーツ札と小銭を分けて持っている
- 南部と北部で豆の種類も呼び名も変わることを把握している
- 値段の高い安いを、日本の物価ではなく現地の賃金で見る
タイ国政府観光庁は、タイの人が普段飲むコーヒーを「濃くて苦くてしっかりと甘みがあるもの」と説明しています。砂糖と練乳が既定で入る前提なので、甘さの調整は注文の時点でしかできません。

1杯の値段を原価から積み上げる5工程
STEP 5 が、この記事でいちばん正直に書かなければならないところです。屋台の1杯がいくらかを公的な統計で確かめる手段が無い。だから売価は置かずに、原価と賃金で下から挟みました。
そのうえで1つだけ確かなのは、豆の値段が売価を決めていないことです。ロブスタ20gの2.5バーツに対して、注文を受けてから出すまでの手間を最低賃金で置いただけで、豆の数倍から数十倍になる。

呼び名と中身の対応表
この6つはタイ国政府観光庁が挙げているもので、露店・モール・レストランのどこでも通ります。フレッシュジュースで割る飲み方も広がっていて、オレンジ、ココナッツ、サトウキビ、パッションフルーツ、ライムと炭酸を合わせたカフェ・マナオ・ソーダ、コーラ割りまで並びます。
豆のほうにも土地の履歴があります。タイ南部のロブスタは1904年頃、ソンクラー県サバヨーイ郡バンタノット地区に植えられたのが始まりとされ、北部のアラビカは1950年から。1969年にラーマ9世がケシの代替作物としてコーヒー栽培を促し、1988年にはシーナカリン王太后がドイトゥン・プロジェクトを立ち上げました。
引っかかりやすいポイント
「ブラックで」が通っても、砂糖は入っていることがある
オーリアンの「オー」は黒を指しますが、中身は砂糖入りの甘いアイスコーヒーです。乳が入らないという意味であって、無糖という意味ではありません。タイ国政府観光庁も「最近は健康志向で甘さ控えめを注文する人もいます」と書き添えていて、裏を返せば既定は甘い側にあります。
甘さを外したいなら、注ぐ前に伝えるしかありません。出てきてから薄める道具は屋台の台の上に無い。
冷たいものを頼むと氷が入る。水まわりは公式が線を引いている
厚生労働省検疫所のタイのページは「患者数のもっとも多い病気は急性下痢症」とし、「水道水をそのまま飲むことは避け、外食の際も衛生管理の行き届いたお店を選びましょう。十分加熱されたものを、冷めないうちに食べるようにしましょう」と書いています。雨季(6月〜10月)は湿度が高く、食中毒を起こしやすい季節だとも記しています。
屋台の氷がどこから来たかまでは公的な情報が書いていません。判断材料になるのは店の側で、氷の保管の仕方と回転の速さは外から見えます。暑季は最高気温が38度から40度に達するので、冷たいものを避けるという選択肢は現実的ではない。私は冷たいものを頼む店と、加熱したものを頼む店を分けるほうが現実的だと考えています。
1杯40バーツと置くと、払う側の賃金で意味が5倍ちがう
売価が分からないので、かりに1杯40バーツと置いてみます。バンコクの最低賃金は時間あたり50バーツですから、48分ぶん。日本の令和8年度の地域別最低賃金は、全47都道府県の答申が出そろって全国加重平均が1,177円(改定前1,121円)、東京都は1,280円で、40バーツ=192円は約10分ぶんです。同じ1杯に、5倍近い開きが出ます。
「タイは物価が安い」と言うとき、たいていは日本円の額面だけを見ています。現地の時給に対する比率で並べ直すと、旅行者にとっての安さと、そこで働く人にとっての高さが同じ数字の裏表だと分かります。値段と満足の距離を分解する話は3,000円のワインの飲み方のほうに詳しく置いてあります。
1杯に2時間かけた場合、採算はどうなるか
注文を受けてから豆を量り、湯を沸かし、布で何度も漉す。そういう出し方をする店で1杯に2時間かかったとして、その2時間を最低賃金で置くと100バーツになります。豆20gの2.5バーツに対して、およそ40倍。時間あたりの杯数で測れば、この店は成り立ちません。
それでも店が回るのは、2時間つきっきりではないからです。湯が沸く間に別の客をさばき、鍋の前を離れ、近所と話す。時間あたりの生産性という物差しは、1つの作業に人が張り付いている前提でできていて、並行して動く屋台の実態には合っていません。分母を「その人の拘束時間」に置き換えた瞬間、同じ2時間の評価はひっくり返ります。
値付けの側にも同じことが起きます。農林水産省が令和5年7月20日に第138号としてGI登録したドイトンコーヒーは、チェンライ県の93,515ライ(149.62平方キロメートル)の範囲で採れる豆で、登録簿には国内市場で一般的なコーヒーの2倍から2.5倍で取引されていると書かれています。豆そのものの原価がその倍率を作っているのではなく、ケシの代替作物として定着した経緯と、UNODCの評価と、王室主導という履歴が値札に乗っている。
旅行者の側にも、この置き換えは使えます。移動の2時間を「何キロ進んだか」で測れば新幹線に負けますが、「何を見たか」に変えれば夜行バスにも勝ち目が出る。物差しを1つしか持たない旅は、効率のいい行程だけが残って、行った意味が残りません。同じ置き換えを時間そのものに当てた記録が72時間PCを開かずに過ごすです。
カードの選び方そのものは旅行系クレジットカードの比較にまとめてあります。
よく届く問い: 相場の動き、産地の見分け、両替の順番
豆の相場が動くと、屋台の値段も動きますか
相場のほうがはるかに速く動きます。国際コーヒー機関の総合指標は2026年9月1日に279.85米セント/ポンド、9月11日には265.31。10日で5%下がりました。屋台の値札がこの速さで書き換わることはないので、変動を先に受け止めるのは仕入れる側です。1杯あたりの豆の原価が2.5バーツなら、5%は0.13バーツにしかならないという事情もあります。
タイ産の豆かどうかは、店で分かりますか
看板に産地が書いてあるのはカフェの側で、屋台では表示がないことが多い。手がかりは地域です。ロブスタはチュンポーン県、ラノーン県、クラビ県、トラン県など南部が産地で、アラビカは北部の高地。GI登録されたドイトンコーヒーはチェンライ県のドイトゥン開発プロジェクトエリアに限られます。
屋台のために小額紙幣を用意しておくべきですか
1杯の値段に対して1,000バーツ札は釣り銭の負担が大きすぎます。両替のときに小額紙幣を混ぜてもらうか、コンビニで先に崩すか。バンコクの最低賃金が日額400バーツだという数字を思い出すと、1,000バーツ札がどれくらいの重さかが分かります。
- 国際コーヒー機関 ICO Indicator Prices(2026年9月・日次の指標価格)↗確認日 2026-09-14
- 税関 外国為替相場(課税価格の換算・2026年9月13日〜19日適用)↗確認日 2026-09-14
- ジェトロ ビジネス短信「バンコクの最低賃金、日額400バーツに引き上げ」↗確認日 2026-09-14
- 厚生労働省 令和8年度 地域別最低賃金 答申状況(全国加重平均1,177円)↗確認日 2026-09-14
- 農林水産省 GI登録第138号 ドイトンコーヒー(生産地・特性・取引価格)↗確認日 2026-09-14
- タイ国政府観光庁「タイのコーヒーについて」(呼び名・歴史・産地)↗確認日 2026-09-14
- 厚生労働省検疫所 FORTH タイ(急性下痢症・水と食事の注意・季節)↗確認日 2026-09-14
出典: 上の原典ブロック / 確認日 2026-09-14 / 写真: Tord Remme/CC0、LannaPhoto/CC BY-SA 4.0(いずれも Wikimedia Commons) / アイキャッチ写真: Chainwit./CC BY-SA 4.0(Wikimedia Commons)








