初めての温泉マナー完全ガイド|入り方の手順とタトゥーの扱い(2026年版)
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温泉の作法のうち、法令の裏づけがあるものは数えるほどです。環境省が温泉法第18条に基づいて定めた掲示基準に載っているのは、掛け湯と洗い、浴槽にタオルを入れないこと、飲酒後と食事の直前直後を避けること、初めは3〜10分で上がること。入れ墨については、2016年に観光庁が3通りの対応例を示しています。
まず確認: その日に入っていい体調か
- 熱が出ていない(病気の活動期はとくに熱のあるときが該当する)
- 少し動くと息苦しくなる状態ではない
- 目に見える出血がない
- 直前に食事をしていない・酒を飲んでいない
- 運動を終えてから30分以上たっている
上から3つは、環境省の掲示基準が一般的禁忌症(浴用)として挙げているものの一部です。熱のある時期、活動性の結核、進行した悪性腫瘍や高度の貧血のような身体衰弱の著しい場合、重い心臓や肺の病気、むくみのある重い腎臓の病気、消化管出血、目に見える出血、慢性の病気が急に悪くなっている時期。旅館の脱衣所に貼ってある「禁忌症」の紙は、この基準を写したものです。
下の2つは事故防止の側です。基準は「食事の直前、直後及び飲酒後の入浴は避けること。酩酊状態での入浴は特に避けること」と書き、運動後は30分程度身体を休めるよう求めています。夕食の前に一風呂、という旅館の定番の流れは、実は基準の想定から外れる。食事の直後でもある。どちらかを選ぶなら、チェックイン直後か、夕食から1時間以上あけた夜の入浴が基準に沿います。
環境省の掲示基準が定めている手順
環境省「温泉法第18条第1項の規定に基づく禁忌症及び入浴又は飲用上の注意の掲示等の基準」(平成26年7月1日 環自総発第1407012号)の別紙1による。数値と条件は原文の表記。
この6段のうち、旅行者がいちばん外しやすいのがSTEP 6です。「温泉の成分を肌に残す」と言われるのは基準にも書かれた通りですが、そのすぐ横に例外が並んでいる。酸性泉や硫黄泉、塩素消毒をしている施設では、洗い流したほうがいい。草津や別府の強い湯で肌が赤くなる人は、我慢して成分を残す理由がありません。
もうひとつ、基準は温泉療養を始めて3日から1週間前後に「湯あたり」が出ることがあると書いています。気分の不快、不眠、消化器の症状、皮膚炎。1泊2泊の旅行では出ないほうが普通ですが、連泊で1日3回入るような滞在では起こりえます。そうなったら回数を減らすか、その日は入らない。
入れ墨の扱いは、施設ごとに3通りに分かれる
2016年3月、観光庁が「入れ墨(タトゥー)がある外国人旅行者の入浴に際し留意すべきポイントと対応事例」を出しました。断る・断らないの二択ではなく、受け入れ方の例を3つ並べた資料です。いま施設が取っている対応は、だいたいこの3つのどれかに収まります。
注意したいのは、これが施設に対する助言であって、入浴者の権利を定めたものではないという点です。断る施設はいまもあります。受付で聞けば済む話で、聞かずに脱衣所まで進んで言われるほうが気まずい。電話なら「入れ墨があるのですが、入浴できますか」の一言で、対応の3通りのどれになるかがその場で分かります。
貸切風呂は、入れ墨の有無にかかわらず解になります。45〜60分の時間貸しで料金を取る施設が多く、露天風呂付きの客室を選べる旅館もある。一人泊で何を確かめるかを先に整理しておくと、予約画面で見る項目が決まります。
引っかかりやすいポイント
タオルを湯に入れない理由は、遠慮ではなく条文
小さいタオルを頭に乗せるか縁に置くか、という話は作法の紹介で必ず出てきますが、根拠は「浴槽水の清潔を保つため、浴槽にタオルは入れないこと」という基準の一文です。マナーというより衛生の規定で、同じ理由から髪も束ねる。旅館業の案内でも、大浴場に入る前にシャワーで身体を洗うこと、浴槽にタオルを入れないこと、髪の長い人は束ねること、水着を着て入らないことが並べて書かれています。守れているかどうかは他の入浴者が見ていますが、見られているのは体型ではなく、ここだけです。
脱衣所を濡らすと、次の人が滑る
浴室から脱衣所へ戻る前に、小さいタオルで水気を取っておく。畳や板張りの脱衣所は水を吸ってしまい、次に上がってきた人が滑ります。基準にも「タオルで水分を拭き取り、着衣の上、保温」とあり、拭くのは脱衣所ではなく浴室の側という順序になっている。実際にやってみると、絞ったタオルで体をひと拭きするだけで、床に落ちる水の量が目に見えて減ります。
浴衣は右の身頃を先に肌へ当てる
自分から見て右側の身頃を先に肌に付け、左側を上に重ねる。これが和装の合わせで、逆にすると死装束の着せ方になります。ここだけは間違えると意味が変わるので、鏡の前で一度確かめてから帯を回してください。帯は男性が腰の低い位置、女性が腰の位置で結ぶのが一般的ですが、こちらは間違えても誰も困りません。旅館で浴衣のまま館内を歩けるかどうかは施設によって違うので、食事処へ行く前に館内の案内を見ておくと迷いません。
断られたとき、途中で気分が悪くなったとき
入浴を断られたら、その場で交渉しても答えは変わりません。施設側は公衆浴場法にもとづく営業として、利用のルールを自分で決められる立場にあります。次に取る手は、同じ温泉地の日帰り施設をもう1軒あたるか、貸切風呂のある宿に切り替えるか。別府や城崎のように、町ぐるみで受け入れの幅が広い温泉地もあります。温泉街の足湯なら、脱ぐ必要も入浴の可否を問う必要もなく、無料のものが多い。

湯のなかで気分が悪くなったときの手順は、基準が具体的に書いています。近くの人に助けを求めつつ、頭を低い位置に保ってゆっくり浴槽を出て、横になって回復を待つ。立ち上がってから倒れるのがいちばん危ないので、先に頭を下げる。高齢者、子ども、身体の不自由な人は1人での入浴を避けることが望ましい、というのも同じ条文にあります。
費用の面では、日帰り温泉なら数百円から2,000円ほどで、旅館の大浴場と同じ湯に入れる施設も珍しくありません。宿泊料金とは別に、鉱泉浴場のある市町村では入湯税がかかります。標準税率は1日1人あたり150円で、これは宿泊料金の外側に乗る。日帰り入浴で徴収するかどうかは市町村の条例によって違います。温泉地に何泊もする行程なら、宿と食事の予算の組み方のほうで先に総額を見ておくと、入湯税の150円は誤差の範囲に収まります。
初めての1回は、平日の昼過ぎの中くらいの施設が落ち着きます。小さすぎる共同浴場は地元の人の作法が濃く、観光地の大浴場は人が多い。湯に浸かりながら山を眺めたいなら富士山が見える時間帯と拠点の選び方を、温泉地を軸に旅程を組むなら金沢・加賀温泉の2泊3日を合わせて読むと、入る時間まで決められます。
- 環境省 温泉法第18条第1項に基づく禁忌症及び入浴又は飲用上の注意の掲示等の基準 ↗確認日 2026-09-20
- 環境省 温泉法に関する通知・ガイドライン等について ↗確認日 2026-09-20
- 観光庁 入れ墨(タトゥー)がある外国人旅行者の入浴に関する対応について ↗確認日 2026-09-20
- 観光庁 旅館Q&A(大浴場の使い方・入れ墨への対応) ↗確認日 2026-09-20
- 総務省 入湯税(標準税率 1日1人150円) ↗確認日 2026-09-20
出典: 上の原典ブロック / 写真: Alpsdake/CC BY-SA 4.0、妖精書士/CC0(いずれも Wikimedia Commons) / 確認日 2026年9月20日








